AIを使うようになって、私の校正時間は1時間から15分ほどになりました。
うれしい変化です。ただ、同じくらいの大きさで、ひとつ考えたことがあります。
浮いた45分は、誰のものなんだろう。
この問いへの答えが、これからのライターの働き方をかなり左右する気がしています。今日はその話を書いてみます。
AIで作業時間が減るのは、もう特別なことではなくなりました
私の場合、長い記事で1時間かけていた校正が、15分ほどで終わるようになりました。構成を考える時間も、以前よりずっと短くなっています。
同じことは、たぶん多くのライターさんに起きています。そして正直に書くと、実際にライターの仕事そのものが減っている実感もあります。これは脅かしたくて書くのではなく、私が現場で感じていることとして、ごまかさずに置いておきたいと思いました。
だからこそ、時間が浮いたあとに何をするかが大事になってきます。
浮いた時間の使い道は、だいたい3つに分かれます
- 単価を下げる……短時間で書けるようになったぶん、1本あたりの金額を下げる
- 本数を増やす……同じ単価のまま、受ける仕事の量を増やす
- 1本あたりの質と付加価値に回す……納品物そのものを良くする
どれが正解ということではありません。事情によって選ぶものだと思います。ただ、私は自分なりに決めていることがあります。
私は、値下げには使わないと決めました
効率化で生まれた余白を、そのまま値下げの原資にはしない。これは自分の中でわりとはっきり決めています。
理由は2つあります。
ひとつは、一度下げた前提は、次の案件にも引き継がれるからです。「短時間でできるようになったので安くします」と伝えた時点で、その速さが新しい基準になります。次にまた効率化しても、同じ話をくり返すことになります。
もうひとつは、もう少し内側の話です。私は、自分が大切にされていないと感じると、その仕事を大切にしたい気持ちが薄れてしまうところがあります。値下げを自分から申し出るのは、自分の時間の価値を自分で下げることでもあって、それを続けると、書くこと自体がだんだんつらくなっていく気がしています。
だから値下げしないというより、書き続けるために下げない、という感覚に近いかもしれません。
代わりに、こんなことをしています
浮いた時間は、もともとの依頼にはなかったものに回すようにしました。
- 記事に合う画像を生成して添える
- サムネイルの案を一緒に出す
- 構成の段階で、気づいたことを補足として伝える
依頼は「記事を書くこと」でも、受け取る側がうれしいのは「記事が良い状態で公開されること」だと思うのです。そこに近づく手伝いができると、こちらの手応えも変わってきました。
同じ時間でできることが増えたぶんを、クライアントさんの満足度に還元する。値下げではなく、こちらのほうが自分には合っていました。
「AIを使う側」と「使われる側」を分けるのは、たぶんここです
AIの話になると、「使える人と使えない人で差がつく」と言われがちです。でも私は、少し違うところに線があるように感じています。
AIで生まれた余白を、誰の取り分にするかを、自分で決められるかどうか。ここが分かれ目なのではないかと思います。
余白が自動的に相手のものになっていく状態は、ツールを使いこなしていても、実質は使われる側に近いのかもしれません。反対に、行き先を自分で選べていれば、それは使う側だと思います。
AIを覚えることと、AIで得たものを自分で配分することは、別の話です。前者だけで止まってしまうと、忙しさは変わらないのに単価だけ下がっていく、ということが起こりえます。
それでも不安になるときに、私が思い出すこと
とはいえ、私も不安になります。仕事が減っている実感がある以上、そう感じるほうが自然だと思います。
そういうとき、私が思い出すことが2つあります。
ひとつは、文章にはある程度の正解があって、そこから先は自分を活かせるかどうかだということ。正解の部分はAIがかなり埋めてくれるようになりました。でも「その先」は、まだ人の領域として残っています。
もうひとつは、初心者しか書けない記事と、ベテランしか書けない記事は、どちらも確実にあるということです。私自身、完全な情報弱者からライターを始めました。何もわからなかったからこそ、いまも「わからない人の気持ち」で書けているところがあります。これはキャリアが長いほど手に入るものではなくて、その時期にいた人だけが持っている材料です。
AIは一般論をとても上手に出してくれます。だからこそ、その上に何を乗せるかで差がつくようになりました。乗せるものは、たぶん誰の中にもあります。
だから、いま不安を感じていても大丈夫だと思います。焦って単価を下げる前に、自分が何を乗せられるかを一度書き出してみるほうが、遠回りに見えて近道かもしれません。
値段の話をするのが怖い、という方へ
ここまで書いておいて何ですが、「下げない」と決めるだけでも勇気がいることは、よくわかります。まして値上げの相談となると、切り出すだけで心臓がばくばくします。私もそうでした。
それでも私は、報酬について主張することは、明日の自分への投資だと思うようになりました。今日その話をしないと、明日も明後日も同じ条件で書くことになるからです。
もうひとつ、自分に言い聞かせている言葉があります。ライター初心者でも、人生が初心者なわけじゃない。ライターとしての経験は浅くても、それまでに働いてきた時間や、積み重ねてきたものは消えません。交渉の場に立つとき、この事実はけっこう支えになります。
ただ、事情はそれぞれだと思います。生活がかかっていて動けないとき、家族のことで手いっぱいのとき、いまはとにかく実績がほしいとき。声を上げにくい立場の人がいることも知っているので、「必ず交渉しよう」とは言いません。
できる範囲で大丈夫です。まずは自分から値下げを申し出ない、それだけでも十分だと思います。順番としては、そこが先で、交渉はもっとあとでいいのではないでしょうか。
まとめ
AIで時間が浮いたとき、その余白をどこに置くかは自分で決められます。
- 値下げに回すと、その速さが次の基準になる
- 質と付加価値に回すと、満足度と自分の手応えに返ってくる
- どちらを選ぶかを自分で決められることが、「使う側」でいるということ
まずは、AIで短縮できた時間を1つだけ書き出して、その使い道を自分で決めてみましょう。全部を変えなくて大丈夫です。1つ決められたら、それがもう「使う側」の状態だと思います。
AIを使って校正時間を短くする具体的な手順は、Webライターの校正をAIで時短する方法にまとめました。あわせて、自分が何を提供できる人なのかを整理しておきたい方は、noteでWebライターのポートフォリオを作る方法も参考にしてみてください。単価の話は、結局のところ「自分が何を渡せるか」を言葉にできているかどうかに戻ってくると感じています。








